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ジャズの習得法。体に沁みこませるにはどんなことが必要?

ジャズ 習得
ジャズが好きなのだけど、自分がプレイするとジャズではなくなると相談しに来る人がたまにいます。

ドラマーは10人いれば10通りのプレイスタイルがありますから、自分なりの演奏を行えばいいのですが、中には頭を悩ませている人もいるようです。

私の生徒さんの中で、退職後に本格的にジャズドラムを勉強している人がいます。その人は、ドラム歴は短いのですが、プレイがジャズなのです。

その人のジャズへの取り組みを文章で贈ってくれました。今、悩んでいる人の参考になるかもしれません。どうぞ、お読みください。

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Contents

ジャズを体に沁みこませるには?

ジャズを聴き始めて45年が過ぎました。いろんなスタイルのジャズを耳にしてきましたし、下手の横好きでギターやフルートを練習したり、現在はドラムにはまっています。

まだまだ手足を自在に動かす域には達しませんが、恥はかき捨てと、ライブハウスのセッションにも参加させてもらっています。

自分で言うのは恐縮ですが、師匠から『技術はともかく、ジャズになっている』との評をいただくことがあり、その理由(?)として『あなたはジャズが体に沁みついている』とおっしゃるのです。

ジャズばっかり聴いてきたから当然の結果かなと思いますが、いくらか自分なりの『聴き方』をしたことが影響しているのかもしれません。

これからジャズに親しみたいと思う方、とくに演奏をやりたいという方に、もしかしたら参考になるかもしれませんので、その(私の)『聴き方』をご紹介したいと思います。

ただし、私が普段聴くジャズはせいぜい70年代の演奏まで、それ以後でもスイングする演奏は聞きますが、フュージョン系のものとかはほとんど聞きませんので、ご了解ください。

聴く

 音楽教育など中学校までのレベルでしたから、ジャズを聴き始めた当初は何が何やらわかりませんでした。

大学に入学したころからジャズ喫茶に通うようになりました。70年代から80年代の初め頃までは各地に多くのジャズ喫茶があり、それぞれの店に個性がありましたね。通う目的はあくまでも「聴き」に行くのです。

バイト代をためてレコード(もちろんLPです)を買うといっても、たかが知れています。持っていないアルバム、別のジャズメンの演奏に、気軽に触れられるのがジャズ喫茶だったのです。
リクエストOKの店もあれば、黙っていてもこちらが好きそうなアルバムをかけてくれる店主もいたり、客の好みなど全く無視で店主の好きなアルバムだけかける店とか様々でしたが、コーヒー1杯でいろいろ聴けるのですから。

必ずやったことは、(可能な限り)ジャケットを手にし、ライナーノートに目を通すことでした。まさに情報の宝庫です。そうやって聴いたアルバムは、不思議なことに、たった1回きり聴いたというアルバムでも、どこか記憶に残っています。

ただ、今になって思うことですが、ライナーノートを無暗に信じてはだめということです。

筆者の感想などが綴られているわけですが、そこには筆者自身の思い入れだけでなく、当然ながらレコード会社の思惑なども含まれてしまうわけです。

また、時代の移り変わりとともに、ジャズ喫茶は次々と姿を消しました。代わりにYoutubeに代表されるような媒体が出現し、アルバム不要の時代になってしまいました。ほとんど無料で、好きなジャズメンのレアな演奏まで楽しめるのです。

こういう情勢を否定するつもりはありません。ただ、できることならアルバムを聴いてほしいと思います。なぜなら、1枚のアルバムを作るには、曲目を選び、一つの演奏を何度も繰り返して選択し、さらに収録する曲順を決めるという手順と作業があり、その結果が1枚のアルバムになっているわけです。アルバム中の1曲のみを聴いては全体としての良さ・価値がわかりません。

近年、アルバムの再発に際して「別テイク収録」というのが目につきます。これはこれでマニアにとっては嬉しい限りとも言えますが、オリジナル・アルバムで受けた感動まで再現できるかというと、そうはいきません。できるだけオリジナル(で収録された)アルバムをお聞きになることをお勧めします。

書く

『書く』ことと『聴く』ことがどうつながるのかと疑問に思われる方もいるでしょう。単に聴くだけという方なら必要ないと思いますが、もし自分も演奏をしたいとお思いの方はぜひ参考にされてください。

特別な訓練を受けた音楽家なら、聴きながら、その演奏を譜面に起こすという作業(写譜)ができます。驚嘆する能力です。それにより自らの演奏の参考にもでき、実力の基盤固めができていくことでしょう。では『特別な訓練を受けていない』者はどうするかです。私もその一人でした。

私が学生の頃は、ポピュラー系の音楽学校など都会にしかありませんでした。唯一?新聞広告かなにかでみた『音楽理論(クラシック)』の通信講座を受講してみたのですが、習得できたのは音符・楽譜の読み方と和音の構成くらいでしたでしょうか。

しかし、音符や楽譜の『読み方』はわかっても、それが実際に『読める』とはいきません。

この点については後述します。和音構成の理屈だけはずっと後になって役立ちました。とにかく、いつかはジャズを演奏したいという思いはあって、音符や楽譜の『読み方』は知っているけれど、『特別な訓練を受けていない』者となったわけです。そんな次第で始めたのが『書く』ことでした。

 何を『書く』のか?それは、ジャズ喫茶でもよいし自分の手持ちのアルバムでもよいから、ある演奏を聴いて『イントロが8小節、テーマはテナーサックスで1コーラス、そのままテナーのアドリブが2コーラス、次にピアノのアドリブが3コーラス、テナーとドラムの4小節交代が1コーラス、最後にテナーがテーマを吹いておわり』というようなことを書き出すのです。

もちろん、文字だけでなく、自分だけにわかる記号も使ってです。さらに気が付いたこと、たとえばピアノのアドリブに移るときにドラムがこんなことをした、というようなことも書き添えます。これをやるときに肝心なのは、きちんと小節を数えていくということです。頭の中で『1,2,3,4(1小節),1,2,3,4(2小節)~』という具合に数えながら聴くのです。これをやったおかげで

◎スタンダード曲は32小節、ブルースは12小節が基本であること(これくらいはいろんな本で知ってはいましたが、納得できました)

◎32小節の曲は8小節単位の組み合わせ(AABAとかABABなど)。12小節のブルースは4小節単位の組み合わせであること

◎たとえばAABAの曲なら、AからBへ移るときのコードの流れ(理屈ではなく、音の雰囲気というか、変化の感じ)が自然に身についたこと

◎4拍の後ノリ(2,4拍目にハイハットを踏む)の感覚が身についたこと
などがあげられます。どのくらいの期間続けたかは忘れましたが、いつの間にか「書かなくても」把握できるようになっておりました。

見る

『聴く』と同じようにやっていたことが『見る』です。これは『楽譜を見る』のですね。

なんとか手に入れた『1001(アメリカの有名な楽譜集)』を見ながら、聴くわけです。これをやったおかげで、ある程度楽譜も『読める』ようになったように思います(初見OKとはいきません)が、むしろジャズ特有のアドリブの面白さがわかりました。

例えていえば、楽譜は食材で、演奏者は同じ食材を自分流に料理していくということですね。これがジャズの面白さ・深みにはまっていった原因かもしれません。

また、『1001』には歌詞も記されていましたから、(ある程度)意味も分かり、その曲の中身を知ることにもつながったと思います。まぁ、ろくに覚えてはいませんけれど。これから楽譜集を購入される方は、なるべく歌詞が書いてあるものをお勧めします。

 注:よく音楽雑誌等に『コピー譜』が掲載されていますが、本来、ジャズの演奏は『譜面に表しうる』ほど、精確ではないということです。実際の演奏は微妙なずれを伴うことが普通と言ってよいと思います。

その演奏を100%忠実に譜面化しようとしたら大変煩雑なものになってしまうでしょう。ですから、コピー譜面はあくまでもガイドラインみたいなものと割り切っておくほうが無難です。

歩く

ドラムを習い始めて最初にとまどったのは、リズムでした。ドラムですから当たり前ですが、楽譜に書いてある8分音符や16分音符、3連符をどんな長さにするか、理屈はわかるのです。

しかし、その通りに叩いてみろと言われるとお手上げでした。ギターを弾いていたので、ある程度分かっていたつもりでしたが、譜面に従うのではなく感覚で引いていたのですね。

テーマやアドリブを奏でるメロディ楽器の演奏には、前記の『微妙なずれ』があります。そのような演奏を耳で聞いて参考にしていましたから、正しく8分音符の譜割で演奏するというような訓練をしていなかったのですね。

ドラムはリズム・キープが役目ですから、特別な例はあるでしょうが、基本的に譜面に忠実なリズムを生み出さねばなりません。その訓練と言っては大げさですが、私が心がけていたのは『歩く』、『歩きながらリズムを感じ取る』ということでした。

人の歩く速さは平均的に♪=110前後です。ちょっと早歩きで♪=120くらいかな。この速さは練習にうってつけなのです。もっとも簡単には、右足からはじめれば『1,2,3,4』、つまり2,4は左足でハイハットを踏む間隔になります。

3連符とか2拍3連などというリズムは、普段の生活の中ではあまり感じないと思いますが、3連符なんかも、歩きながら手で腿を『タ、タ、タ』と叩きながらやると、把握しやすいと思います。特別な機材も不要、無料で、いつでも、どこでもやれるのです!ぜひ試してみてください。

歌う

 『歌う』といってもボーカリストのように歌詞を歌うのではありません。リズムを歌うのです。

私の師匠からも、たとえば16分音符の練習では『ヤキソバ』とか『クッタゾ(喰ったぞ)』というように、リズムを歌うことを教えてもらいました。その応用?ですね。たとえば『2拍3連』なら『ドン・タ・ド・タン、ドン・タ・ド・タン』という具合(あくまで私の場合)に、声に出さなくても良いので、頭の中で歌うわけです。

もちろん、全部覚えられませんから、私のテキストには譜面の傍らに『ドン・タ・ド・タン、~』と書き込んでいます。

楽譜を見ただけでやれる方には無用と思いますが、慣れないうちは有効な方法だと思います。複雑なリズムでも、頭の中で歌えたら、必ずドラムで再現できます。もちろん練習第一ですが、リズムを歌いながら遅い速さ(♩=60くらい)から始めていけば、大丈夫ですよ。

演る(やる)

楽器をやっている方であれば、どこかで自分の実力を試してみたくなると思います。よく〇〇教室の発表会というイベントを目にしますが、これは受動的ですね。能動的にやろうではありませんか!

ジャズ喫茶は激減しましたが、一方で、ライブハウスはあちこちにあるようです。中には素人お断り、という敷居の高いお店もありますが、探せば初心者OKの店が必ず見つかります。そういうお店が見つかったら、足繁く通いましょう。

もちろんプロ、セミ・プロ、アマチュアだけどプロ並みなんていう人達が集まっている中で、駆け出し者がやるには気後れも恥ずかしさも感じて当たり前です。1度で良いから、勇気を出して参加してみましょう!おそらく、気後れや恥ずかしさは消え失せ、楽しさを感じられるはずで、そうなればもう一度・・となっていくでしょう。

スポーツと同じで、上手な人とやると必ず上達していきます。有難いことに、そういう周りの上級者から様々なアドバイスももらえるに違いありません。

最後に

昔から『ジャズは難しい』という言葉をよく耳にします(今でも)。音楽に難しいなんてあるはずがありません。あるとすれば、音楽を『難しいもの』と感じさせる人、ある種の演奏家や評論家やマニアなどなど、がいるだけです。くれぐれも惑わされないようにしましょう。

私は2000枚くらいのアルバムを持っていますが、これらは40数年の間に集めてきた結果に過ぎませんし、おそらく何十万枚(百万枚?)とあるジャズ・アルバムの1%にもなりません。ですから、未だに演奏を聴いたことのないジャズメンもいれば、超有名アルバムとされていても名前しか知らないアルバムもたくさんあります。

ジャズを聴き始めて間もないという方でも、大好きなアルバムが1枚でもあれば、れっきとしたジャズファンですし、キャリアの差など関係ありません。けして頭でっかちなジャズファンになられませんように。

また、演奏をする、しないは人それぞれで、聴く方がいてこそ演奏も成り立つのだと思います。演奏者のほうが優位にたっているような風潮がありますが、これは大きな間違いですね。ちゃんと聴いて楽しんでくださるなら、対等です。このことも心に留めておいていただきたく思います。

>>シンバルレガートの叩き方

>>ジャズドラム練習が分からない人へ

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